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  4. 事業内容

2.1 事業目的

1) 地方創生にかかわる岡山県の現状と課題

2017年3月に出された岡山県の将来ビジョン『新晴れの国おかやま生き活きプラン』では、県を構成する美作、備前、備中の各地域において共通する次のような現状と課題が指摘されている。すなわち地域には農産物(フルーツ、畜産品、米・麦他)、伝統工芸品(備前焼、竹細工他)、地場産業(繊維・ジーンズ、酒・醤油醸造他)、観光資源(温泉、街並み、公園、城跡・古墳他)等様々な地域資源が豊富に存在するが、販売や観光客の増加が伸び悩んだり、人口減少、高齢化によってそれらの担い手が不足したりと、地域の維持・発展に懸念が示されている。これは言い換えると、各種地域資源が域外・域内者にとって、あるいは市場レベルにおいて十分に価値あるものになっていないという問題である。同プランでは、そうした認識をもとにブランド力向上、産業・観光振興、医療、介護、子育て環境の整備等によって地域価値を高め、移住・定住、観光客を中心に人を呼び込む魅力ある地域づくりに取り組む必要性が語られている。

2) 本学のこれまでの地域に対する取り組み

本学はかねてより「地域と呼吸する大学」を標榜し、下記で示すように「地域貢献」を大学の全体ビジョンの中に位置付けてきた。岡山県内の8市町村(岡山市、備前市、瀬戸内市、和気町、笠岡市、津山市、真庭市、新庄村)と包括連携協定を締結し、共同研究(2008、2009年度笠岡市、2012年度瀬戸内市、2012、2014年度津山市他)を実施したり、地域での学生によるフィールドスタディ(2011年度新庄村、2015、2016年度笠岡市、2012年度瀬戸内市、2016年度津山市・岡山市他)、ボランティアの学生派遣(真庭市:社まつり「2016年度」、湯原露天風呂の日・はんざき祭り「2011年度から毎年」、岡山市:京山地区ESDイベント、美作市:海田番茶伝統製法保存活動「以上2016年度」)等を行ってきた。そして、こうした地域とのつながり、連携は次第に強化されてきている。

3) 事業の目的

こうした現状を踏まえ、本事業の目的は、地域資源をより価値あるものに転換させるという地域価値の向上に関する研究プロジェクトを通じて、包括連携協定先を中心に岡山県内各市町村のまちの魅力を高めることに貢献することである。本事業では、地域価値を社会的側面と経済的側面との2つに分類した上で、それぞれにおいて下位研究分野を設定し、総合的に地域研究に取り組む。具体的には、社会的側面として、1.生活の質の向上、2.自然環境との共生、3.文化、歴史、ダイバーシティの保存・促進、経済的側面として、4.特産品開発、5.観光開発、6.空き家再生、7.仕事創造、8.地域内の経済循環の分析・考察、9.地域ブランド戦略、の9分野である。これら分野それぞれに、本学が持つ経営学、経済学、法学という社会科学的知見から研究を推進する。
その時、他大学にはない本学独自の特色=ブランディングとして次の点を強調しておきたい。それは、『寄り添い型』スタイルで研究に取り組むということである。従来大学が地域に出て研究を進める場合、各種資料、実地調査によって地域の現状把握を行い、その結果を分析し、報告書作成、政策提言を行うといったプロセスを踏むのが一般的であろう。それは一定の効果を生み出してきたことも事実だが、ややもすれば「上から目線」的な認識優位に基づいた研究に帰結したり、極端な場合地域の人にとっては机上の空論に映ったりしてきたのも否めなかった。本事業は、過去のそのような対応への反省から、「上から」ではなく地域と「同じ目線」に立って研究を進めていく。すなわち、特産品の開発や販路開拓、観光プランの作成・実施、まちのPR、イベント等の地域における各種取り組みに対して、それは研究対象であると同時に、それらの取り組みに研究以外でのボランティア等も含め学生、教職員らが積極的に参加協力するという「共同/協働研究」とすることである。いわば近年社会科学の分野でも用いられるようになった参加観察、エスノグラフィ-的な研究手法を本事業に積極的に取り入れ、そのことを通じて「地域に寄り添いながら地域の価値、まちの魅力の向上に貢献する大学=『地域と呼吸する大学』」という本学独自のブランドの確立を目指す。

4) 大学の将来ビジョン

本学の将来ビジョンは、「法学、経済、経営の社会科学系で、教育、研究、地域貢献、国際化の活動において、社会、国家、人類のために有益な人材を育成する」という全体ビジョンと、それを構成する教育、研究、地域貢献、国際化の下位ビジョンからなる。教育ビジョンでは、学力の3要素の一つである「思考力・判断力・表現力」を主としてアクティブラーニング、フィールドスタディで習得させるとあり、本事業において学生を調査研究に参画させることはこれに該当する。また、研究ビジョンでは、「社会事象を対象とした基礎及び応用研究を、教員各自およびグループで実施し、研究成果を上げることにより社会に貢献する」とし、「寄り添い型研究」グループを形成し、研究成果に伴う認識度を向上させることにより、これを実現させることができる。さらに、地域貢献ビジョンでは、「社会科学分野の教育研究が中心であることから、サービス系産業、地方自治体等の課題を共同研究し、成果としての知的財産を基に実用化・事業化を目指し、地域の発展に貢献する」とし、これも本事業の推進により達成が可能である。また、本ビジョンのステークホルダーは、受験生、在学生、保護者、学校関係者、企業、自治体、住民、海外としており、それぞれに対してビジョンを具現化する評価指標も設定している。
本事業により、研究活動に対する全ステークホルダーの認識度を向上させるために将来ビジョンの5つのビジョンにステークホルダーの認識度を加えている。将来ビジョンの全体内容は、ブランディング戦略ページに記載している。

2.2 期待される研究成果

1) 事業の趣旨に沿った研究テーマ

本事業は、地域価値向上に関して社会的側面と経済的側面からなる1~9までの9分野(前述)を設定し、それぞれの分野において14研究テーマで研究を進める。

  • (1)社会的側面での研究テーマ
    • 1.生活の質の向上では、地方自治体の婚活支援や高齢者雇用の問題を研究する。
      • 1)結婚・子育てに向けた若者支援と高齢者の活用(津山市、瀬戸内市)
    • 2.自然環境との共生では、環境経済学の知見を活用し、自然環境問題にアプローチする。
      • 1)農業振興と自然環境との共生に関する経済分析(津山市)
    • 3.文化、歴史、ダイバーシティの保持・促進では、増加する外国人居住者や外国人観光客について言葉の課題を調査研究する。
      • 1)岡山市におけるコミュニケーション支援及び言葉のバリアフリー化
  • (2)経済的側面での研究テーマ
    • 4.特産品開発では、地域の伝統食品、農産物等を中心とした商品開発に関する4研究を行う。その研究テーマと対象地域は次の通りである(以下同様)。
      • 1)備前醤油の歴史・現状・展望(備前市、岡山市、倉敷市)
      • 2)地域農産物を活用した加工食品の商品開発(瀬戸内市)
      • 3)岡山県におけるフードビジネスと地域活性化(総社市)
      • 4)蒜山地域における農産物を活用した特産品開発(真庭市)
    • 5.観光開発では、観光客の減少が続く温泉地と今後の観光が期待できる瀬戸内海地域での研究を実施する。
      • 1)湯原温泉における新たな地域資源を生かした観光振興(真庭市)
      • 2)笠岡市真鍋島の観光振興(笠岡市)
    • 6.空き家再生では、相続問題を含め個人の資産管理の面とまちの問題の両面から研究を行う。
      • 1)金融での中古住宅流通の活性化、地域資産の有効活用(備前市、津山市)
    • 7.仕事創造では、アプリを活用した地域情報の発信という新たな仕事づくりと、若者の地元製造業離れという問題への対策を考察する。
      • 1)地域の情報発信、スタンプラリーゲーム支援機能と地域のPR機能を有し、スマートデバイス上で動作するアプリ開発(新庄村)
      • 2)地元企業への若者就職支援(岡山市)
    • 8.地域内の経済循環の分析・考察では、主に地域金融と近年盛んになってきているクラウドファンディングが地域経済に果たす役割について研究する。
      • 1)地域金融パフォーマンスと暮らしの関係(包括連携協定市町村)
      • 2)クラウドファンディングに対する地方企業の資金ニーズ(岡山市、瀬戸内市)
    • 9.地域ブランド戦略では、主に観光客や移住者という外部者向に対するブランド構築に取り組む。
      • 1)観光客、移住者の増加に向けた地域ブランド戦略(和気町)

2) 期待される成果、全体的な優先課題

以上の研究テーマは、いずれにおいても明確に研究の焦点が絞られていると同時に、地域の経済・社会、雇用、文化の発展や特定の分野の発展・深化に寄与するものである。各研究テーマには研究者、具体的な評価指標、達成目標が設定され(表5を参照)、常時研究推進グループの会議等で進捗状況を中心に内容が検討される。年度末には内・外部の評価を受けることにもなる。また、これら研究の対象地域はほとんどが包括連携協定を結んでいる場所であり、地域側の研究受入れ体制も整っている。さらに、これらの研究のうち9テーマは、本学独自の研究費予算により平成28年度からすでに始動している。
これらのことや本学のこれまでの地域での取組実績からみても、各研究の実現可能性は高く、その成果は各地域の地域価値の向上につながり、魅力あるまちの創造に対して大きな貢献が期待できる。加えて、これらは寄り添い型研究として、政策実施に向けてのデータ提供や提言を行うと同時に、具体的な地域活動にも協力することになる。これは、担い手が不足している地域において、魅力あるまちの創造に向けて大きな力を発揮するに違いない。

3) 年次計画を含めての実現の可能性

9分野の14研究テーマにおける評価指標の主なものを、以下のようにまとめている。なお、3年間の評価指標での達成目標については、表5に、3年間の成果指標と達成目標を具体的に示しており、研究グループでは、2か月毎に進捗管理を実施し、市町村から選出されているRB委員会委員との打ち合わせにより、計画の実施を確実に管理する。また、3か月毎に研究統括グループでの検討により、事業全体の進捗を管理する。

4) 9分野の評価指標のまとめ

  • 1.ヒアリング調査回数、学生によるフィールド調査回数、政策評価、人口シミュレーション他
  • 2.地域産業連関表作成、二酸化炭素排出量削減効果算出、超過環境負荷率の算出他
  • 3.ヒアリング調査回数、実地調査回数、アンケート調査回数、政策提言他
  • 4.実地調査回数、学生によるフィールドスタディの回数、ボランティアの回数、商品開発、販路開拓他
  • 5.アンケート・インタビュー調査の回数、地域資源の発掘数、特産品開発の協働、ボランティア回数、観光イベント実験、観光プラン実施他
  • 6.流通可能、不能な中古住宅数調査、空き家バンク登録物件の評価・分析、学生によるフィールドスタディの回数、金融面での支援プラン、住宅承継策の提案他
  • 7.アプリダウンロード数、アプリによる訪問者数、地域情報発信数、インターンシップ参加学生数、就職に対する意識の変化、就職者数(率)他
  • 8.ヒアリング調査回数、学生によるフィールドスタディの回数、政策提言他
  • 9.ヒアリング調査回数、実地調査回数、ブランディング活動の協働、ボランティア回数、PR動画の作成他